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『厭魅の如き憑くもの』: 真相は人か怪異か。 [2017の夏企画十二回目]

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日が短くなってきました。

夕暮れ。黄昏時。逢魔時。
そんな時刻がいままでよりも早くにやってきますね。

さて、そんな話題で始まった今回は、またもやホラーもの。
今月は、『SIREN』や『怖い話』、『夜市』などそんな記事が多いですね。

では、最後まで読まないと、ミステリーなのかホラーなのか分からない一冊をご紹介です。
ただ、最後まで読んでも分からないかもしれないけれど……。

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今日の一冊

今回は、タイトルにある通りこちらです。

厭魅まじものの如き憑くもの』
著者:三津田信三 出版社:講談社

今回は、村の絵図や見取り図などが付いている文庫版をご紹介。

あらすじ

憑き物信仰のある神々櫛かがぐし村。
古来から続く伝承や神隠し、そしてカカシ様などの信仰が根付くその村へ取材に訪れた怪奇幻想作家、刀城言耶。彼が、その地へ足を踏み入れた後、ある怪死事件が起こることとなる。
果たして、その事件の真相は人間によるものなのか、それとも……。

感想

土着信仰や民俗学などを上手く取り入れたミステリー作品であり、序盤からその地域の名前の由来など広く話を展開させながら行われる会話はかなり惹き付けられるものがあり、面白いですね。
まあ、ここは好き嫌いが分かれるところかもしれませんが……。

さて、舞台となるのは神々櫛村。
この村には神隠しの話を始め、カカシ様という神様、神櫛家と憑き物筋の谺呀治家の二つの旧家の静かな対立、そして、病気などをお祓いして取り除こうとする憑き物信仰。これらが絡み合って事件へと繋がっていきます。
儀式の様子や、上にも書いたように土地や人物の名前についても丁寧に話がされるので、無理なく世界観に入り込めた印象です。

また、「村」という閉鎖的なコミュニティにおける意識や怖さなど、怪異以外の恐ろしさもこの小説からは漂ってくるようで、物語の不気味さをより一層引き立てています。

ここで重要なのが、カカシ様の存在。
このカカシ様は、山神様として神々櫛村では祀られており、畏れられている……。
さらには村の至る所に、組笠と蓑で作られているカカシ様が置かれているという状況が、何とも言えない異質な怖さ、まるで常に見られているような感覚にもなってしまう恐ろしさがありました。

この村で起きる今回の事件の被害者は皆、組笠と蓑を身に付けた状態で発見されることになる……。果たして、これはカカシ様の祟りなのか。

最後まで、ホラーとミステリーの要素が入り混じり、展開が二転三転していくのは読んでいて緊張感があります。

また、村の絵図や家系図、章ごとに複数人の一人称視点で進行していく構成……そのため、絵図により「少し難しいな」とか、「この道の作りはどうなっているんだろう」などの地形の問題も解決です。
それに、この家系図というのもありがたく、谺呀治家の女性の名前はみんな、漢字は異なるものの「サギリ」であり、「これは誰だろう」なんて迷っても安心できます。

余談ですが……。
このタイトルの『厭魅』、ここでは『まじもの』と読ませていますが、読み方としては「えんみ」ですよね。
この「えんみ」というのは呪詛法の一つで、所謂「藁人形」なんかの人形を使う方法のことを指した言葉だったと記憶しています。
このようなカカシ様という藁で作られる神様が登場する話で、「厭魅」という漢字に、「まじもの」という当て字を使いタイトルにするのは面白いなと、読んでから少し経った後に思いました。
「厭魅」について、当時は詳しくなかったので……。

もっと、書きたいことはありますが、今回はこの辺で。

この事件は怪異によるものなのか、人為的なものなのか。
貴方の眼で確かめてみてくださいね!

夏の終わりに読んで欲しいホラーでした。

秋がもう目の前に来て、手を差し伸べているみたい。

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スドー

こんにちは!

読書と料理が趣味、ゲームが生き甲斐の村人S。

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